FAQQUESTIONS

給与の決め方

Q1海外給与に対する考え方

海外駐在員の給与は、国内給与とは考え方が多少異なると聞いています。
海外駐在員の給与は、一般的にどのようなコンセプトのもとで、設定されるのでしょうか。

A. 日本勤務時の給与は、まず「総額」ありきで、その中から税金や社会保険料を支払いますが、海外勤務者の給与はまず「手取額」を設定し、その手取額から税金・社会保険料を逆算して計算するのが一般的です。この手取額から総額を計算することを、「グロスアップ計算」といいます。
そもそも日本勤務時の給与はまず「総額」ありきで、その中から税金や社会保険料を支払いますが、海外勤務者の給与は、まず「手取額」を設定し、その手取額から税金、社会保険料を逆算して「総額」を計算するのが一般的です。通常、海外勤務者は海外勤務期間中も日本の社会保険に継続加入し、さらに勤務地国でもその国の社会保険制度に加入するのが一般的です。
そのため、最初に総額を決めて給与を支給していたのでは、海外勤務者は日本での社会保険だけでなく、勤務地国の社会保険料も負担しなければならないことになります。(*)。
このような点からも、海外勤務者の給与は図表57-1のとおり、まず、「手取額」を設定し、その手取額を保証するには総額でいくら支払わなければいけないのかを、勤務地国での税金や社会保険料等を加味して計算するのが一般的となっているのです。
(*)日本と社会保障協定を締結している国、また自国の社会保険制度への外国人の加入が必要ない国へ勤務する場合を除いては、海外勤務者は勤務地国の社会保険制度への加入が必要になります。(ちなみに日本と本書で取り上げる4か国との間で社会保障協定は締結・発効されていません。)

Q2海外基本給の設定方法

海外基本給の設定方法として、いくつかの方式があると聞きましたが、具体的にはどのような決定方式がありのでしょうか。

A. 海外基本給の設定方法としては、大きく分けて「別建て方式」「購買力補償方式」「併用方式」の3つがあります。大手企業では購買力補償方式を使っている企業が大半ですが、中堅・中小企業では、併用方式を利用しているケースが多いようです。
海外勤務者の給与(特に海外基本給)の決定方式は、労務行政研究所の分類によりますと大きく分けて「別建て方式」「購買力補償方式」「併用方式」の3つがあります。
では、海外基本給の設定に当たり、各方式の利用割合はどのようになっているのでしょうか。労務行政研究所が大手主要企業数10社を対象に毎年行っている「海外駐在員の給与」に関する調査結果を見てみることにします。

年々「別建て方式」を採用する企業の割合は減り、代わって「購買力補償方式」が海外給与設定の主流となっています。
ただし、この調査は世界各国に拠点を持つ主要企業を対象として行われたものです。そのため、中堅・中小企業においては、現時点でも併用方式や別建て方式などを採用している企業が少なくありませんが、いずれにせよ、海外基本給の設定方法としては、この3方式のいずれかを利用している企業がほとんどであることが、読み取れます。
では次ページ以降で、各方式の概要を説明していきます。

Q3別建て方式

別建て方式の特徴と、そのメリット・デメリットについて教えてください。

A. 「勤務地国で一定の対面を保つことができる水準の給与を支払う」という考え方です。同業他社水準等を参考にして基本給を設定するケースが多くなるため、基本給の設定根拠があいまいになる傾向にあります。その反面、いったん適切な海外基本給を設定できれば、毎年の物価変動に見合う調整を行うだけでよいというメリットもあります。

1.別建て方式とは

海外勤務地(任地)で一定の対面を保つことができる水準の給与を支払うという考え方
沿革
古くから海外勤務者の基本給決定方式として使われてきた方式でした。
20年ほど前までは、この方式が海外給与決定方式の主流でしたが、最近は次で説明する「購買力補償方式」が主流になり、いまや同方式は少数派です。

別建て方式による基本給の設定方法
当方式では国内給与を基礎とせず、全く別個に海外基本給を設定することになります。
具体的な海外基本給の設定方法としては、会社が独自に勤務地における必要生計費を調査し、基本給を設定する方法や、大手商社が発表する資料や同業他社動向などを参考にして基本給を設定する方法が考えられます。しかし、自社独自で現地生計費を把握するのは難しいため、現実には同業他社水準等を参考にしながら基本給を設定する(設定した)ケースが多いと考えられます。

2.別建て方式における各種手当に対する考え方

海外勤務手当
別建て方式で設定した海外基本給の場合、海外勤務手当は海外基本給の中に織り込まれている(つまり基本給は実際の生計費よりもかなり多めに支払われている)ケースが多いため、別建て方式を採用している企業では、海外勤務手当を支給するのは少数派です。

家族手当
海外基本給の一定割合を家族手当として加算するケースがほとんどです。

3.別建て方式の特徴

メリットやデメリットなど
自社での独自調査が難しいことから、結局は他社動向を見ながら基本給を設定するため、海外基本給の設定根拠が曖昧になる傾向があります。そのため、そのときどきの駐在員の経済事情に応じた給与引上げ要請に応じざるを得なくなる可能性があります。

Q4購買力補償方式

購買力補償方式の特徴と、そのメリット・デメリットについて教えてください。

A. 日本での生活水準を勤務地国で維持するという考え方です。海外給与の決定・改訂に必要なデータを外部機関に求めることで業務効率化を図れるというメリットがあります。一方、この方式でいう購買力補償とは、自分以外の第三者の購買力を補償しているに過ぎず、本当に購買力を補償しているに過ぎず、本当に購買力を補償しているかという点には考慮の余地があります。

1.購買力補償方式とは

本国(日本)での生活水準を勤務地国でも維持するという考え方
沿革
1980年代後半に、大手商社等が導入してから急速に普及しました。そもそも高い生活レベルを維持しているアメリカ人が、海外勤務中もアメリカでの生活水準を維持できるように作られた方式です。

考え方
購買力補償方式で海外基本給を設定する際には、都市別に定められた「生活費指数」を使用します。なお、この生活費指数は、東京を100として各都市を指数化したもので、外資系コンサルテイング会社から購入することになります。
海外基本給の算出に当たっては、たとえば「年収600万円で、配偶者・子女各1名を扶養していれば、日本での生活費はこのくらい」という金額を決め、その金額に対し、勤務都市ごとに設定された「生活費指数」と「為替レート」を掛け合わせて海外基本給を設定します。ですから、日本での給与と海外基本給が形式的にはリンクすることになります。
つまり、日本での購買力を海外勤務地国でも維持しようとする点に同方式の最大の特徴があり、このことは購買力補償方式のスローガンともいえる「ノーロス・ノーゲインの法則」という言葉に集約できます。

2.各種手当に対する考え方

海外勤務手当
購買力補償方式で算定した海外基本給には、海外で生活するに当たって必要な費用しか含まれていないので、同方式を採用する場合、別途海外勤務手当を支給するケースがほとんどです。

家族手当
購買力補償方式の場合、たとえば「家族3人なら必要生活費はこれだけ」という形で基本給を設定するため、同方式を採用する企業では、家族手当を支給しないケースが多くなっています。

3.特徴

メリットやデメリットなど
外部機関の「生活費指数」という客観的なデータを用いることにより、海外勤務者に対して基本給設定の根拠が説明しやすくなります。ただし、「購買力補償」といっても、その「購買力」とは第三者の購買力を補償しているに過ぎず、海外勤務者本人の購買力を補償しているか、という点については疑問が残ります。また、勤務都市によって生活費指数に少なからず差があるため、当該指数を導入した場合、たとえば「同じ東南アジアに勤務するのに、どうして自分の勤務する都市の指数はこんなに低いのか、指数の根拠がわからない」という不平不満も出るようです。ただし、同方式を採用すれば、会社独自で生計費を把握する必要もなく、海外勤務者を送り出す企業は、人事担当者の時間的コストを節約できるものと思われます。

Q5併用方式

併用方式の特徴と、そのメリット・デメリットについて教えてください。

A. 日本勤務時の基本給をそのまま現地の基本給とする考え方です。「海外に出たら、生活費が余分にかかるので、その分加算する」という非常に平易で説明しやすい方法です。ただし、海外基本給が円貨で固定されるため、大幅に円高又は円安になった際に、基本給の設定金額を見直す必要があります。

1.併用方式とは

日本勤務時の基本給を海外基本給と設定
沿革
別建て方式」と並んで、日本で以前から採用されている方式です。中堅・中小企業では、今でもこの方式を使用しているケースも多いように見受けられます。
考え方
日本勤務時の月給手取額をそのまま海外基本給とし、「海外勤務では国内勤務時に比べ、生活費が余分に発生するので、国内で支払っていた給与にプラスアルファを支給する」と考える方法です。

2.各種手当に対する考え方

海外基本給に加え、家族手当や海外勤務手当を支給するケースなど様々です。

3.特徴

メリットやデメリット
日本での給与(手取金額)をそのまま海外基本給とし、海外勤務に伴う追加コストを別途支給するという非常にわかりやすいシステムのため、海外勤務者にも納得させやすい方法です。一方、海外基本給が円建てとなるため、為替レート変動に応じて海外基本給の額が上下してしまうという側面があります。その反面、日本での給与をそのまま基本給としていることから、帰任後、国内給与体系への移行がスムーズであるというメリットがあります。